太陽光入札、9年間で落札価格は5分の1に — 第24回の「0円入札」38件が示すもの

公開日:2026-10-23

第24回入札の結果:募集79MWに応札143.6MW、落札は57件

2025年6月20日、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が太陽光第24回入札(令和7年度第1回)の結果を公表しました。対象は出力250kW以上のFIP太陽光発電設備、募集容量は79MW、供給価格の上限額は8.90円/kWhです。

応札は73件・143,618kWで、募集容量の約1.8倍。落札は57件・79,000kWで、募集容量をちょうど埋める結果となりました。加重平均落札価格は4.06円/kWh、最低は0.00円、最高は7.79円です。

この回の特徴は、0円/kWhでの落札が38件(落札件数の66.7%、28,650kW=落札容量の36.3%)に達したことです。件数では3分の2が0円、容量では3分の1超が0円という構成になりました。

落札価格は「0円」と「5〜8円」の2極化

第24回の落札価格を並べると、0円が38件、4.99円が1件、5.00〜5.99円が8件、6.00〜6.99円が5件、7.00〜7.79円が5件でした。0円と5円以上の間にほとんど案件がなく、価格分布がきれいに2つに分かれています。

0円の38件は4社に集中しています。地域電力株式会社が24件、みつばち101合同会社が10件、Bison energy株式会社が3件、GPSSアグリB合同会社が1件です。一方、5円以上で落札したのは、未来創電蒲生日野合同会社(19,500kW・5.70円)、株式会社町おこしエネルギー(9,999kW・7.77円)、苫小牧TJDソーラ―合同会社(2,636kW・7.79円)など、1件あたりの規模が大きい案件や、地域で独自に開発してきた事業者が中心でした。

落札容量の集中度も高く、上位3社で落札容量の59.6%を占めます。件数では中小規模が多い一方、容量は少数の大型案件と0円入札の事業者が持っていく構造です。

第1回から第24回までの落札価格推移

OCCTOおよび旧入札実施機関が公表した結果を第1回から並べると、落札価格の長期低下がはっきり見えます。

第1回(2017年11月)の上限価格は21.00円/kWhで、落札は9件・141MWにとどまりました。第2回(2018年9月)に至っては、上限価格15.50円を下回る応札がなく、落札者ゼロという結果になっています。当時の事業者にとって、この価格では採算が合わなかったということです。

第4回(2019年9月)以降は上限価格の引き下げに沿って落札価格も下がり、第11回(2022年3月)に9.99円、第18回(2023年11月)に8.55円となりました。ここまでは毎回0.3〜1円程度の緩やかな低下です。

転機は第19回(2024年3月)でした。この回で初めて0円/kWhの落札が現れ、加重平均落札価格は前回の8.55円から5.11円へと一気に下がります。以降、第24回・第25回・第27回・第28回でも0円落札が記録され、第24回の4.06円が9年間での最低値です。

直近はやや持ち直しています。第27回(2026年3月)4.61円、第28回(2026年6月)6.74円、第29回(2026年8月)8.89円。第29回は募集115MWに対して落札8件・38MWで、落札率は33%まで落ちました。0円で応札する事業者が減った結果、容量が埋まらなくなっています。上限価格も第28回から9.60円へ引き上げられ、これは2017年の制度開始以来はじめての方向転換です。

0円入札はなぜ成立するのか

0円で落札しても、FIP制度ではプレミアム(賦課金による上乗せ)がゼロになるだけで、発電した電気は市場価格で売れます。加えて、バランシングコスト(需給調整費用)の支援や、発電側課金の負担軽減といった措置が受けられるため、事業者にとっては「プレミアムを放棄する代わりに政策的な優遇を得る」選択になります。結果として、価格を下げてでも容量を取りにいく動きが生まれました。

ただしこの構造は、発電所の収入が市場価格と自社の発電量に直接連動することを意味します。プレミアムがない以上、想定より発電量が少なければ、その分がそのまま収入減になります。

落札率100%は「市場が健全」という意味ではない

第23回(2025年3月)は5件・93,000kWで募集容量をちょうど埋め、第27回(2026年3月)は11件で79MWを埋めました。落札率だけを見ると100%で「順調」に見えますが、実態は少数の大型案件が容量を一度に持っていった結果です。1件あたりの規模が大きい事業者にとっては有利でも、300〜500kW規模で開発する事業者は入りにくい状況になっています。

第24回の落札内訳を見ても、300〜999kWの案件は37件あるものの、容量では26%にとどまります。件数は中小が多く、容量は大型が持つ。この二極化は価格だけでなく、案件規模にも表れています。

発電所オーナーにとっての意味

入札の落札価格は、新規にFIP認定を取る案件のプレミアム単価を決めるもので、すでにFITで運転している発電所の売電価格には影響しません。したがって「入札価格が下がったから既存电站の収入が減る」ということはありません。

一方で、新規案件の収益前提が厳しくなるほど、既存発電所の評価額や売買価格、そして運転維持の考え方には影響が出ます。プレミアムが付かない案件では、収入を支えるのは発電量そのものです。同じ設備でも、汚れや草木の影、パワーコンディショナの停止を放置するかどうかで年間収入は数%変わります。

実際、当社が診断した石巻市内の発電所では、2025年4月から6月にかけてNEDOの想定に対する達成率が64%、57%、65%まで落ち込んでいました。秋冬は90%台で推移しているため、季節要因ではなく、汚れや周囲の草木による影響が疑われる状況です。こうした低下は日々のモニタリングがなければ気づきにくく、気づいたときには1年分の損失になっていることが少なくありません。

入札価格の動向は新規事業の話に見えますが、既存発電所の価値を守るという意味では、発電量を正しく把握して低下の原因を早期に見つけることが、価格以上に重要になっています。

データの出典

本記事の数値は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した各回の「入札の結果について」、および経済産業省の入札制度関連資料に基づいています。第1回から第29回までの落札価格・募集容量・落札件数の一覧は、当社にて整理のうえ保有しています。個別の数値について確認が必要な場合はお問い合わせください。

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